タコチューズデーとは|火曜にタコスが安くなる理由

観戦旅行
タコチューズデー(Taco Tuesday)は、飲食店が火曜日にタコスを割引価格で提供する米国の商慣習である。この言葉は1989年12月19日から2023年8月1日まで米国の登録商標だった(登録番号1572589・レストラン業)。ニュージャージー州向けの別の登録は2023年10月25日まで存続し、2件とも米国特許商標庁(USPTO)の記録上、取消により消滅している。2026年のサンディエゴ・パドレス主催試合81試合のうち火曜開催は12試合で、その12試合すべてが18時40分開始である(筆者集計)。

この記事でわかること

  • タコチューズデーの起源として一次記録で確認できる年と、確認できないこと
  • 1989年から2023年までの商標の経緯を、USPTOの登録番号・審判番号・日付で追った表
  • 「もう誰でも自由に使える」が半分しか正しくない理由(今も有効な登録が1件ある)
  • 2026年パドレス主催の火曜ゲーム12試合の一覧と、開始時刻がそろっている意味(筆者集計)

火曜だけタコスが安い理由を調べ始めると、料理の歴史書ではなく連邦政府の商標データベースにたどり着く。本記事はそこで見つかる一次記録だけで組んだ。日付・登録番号・審判番号はすべて2026-09-09に取得している。


1. 結論:タコチューズデーは「火曜にタコスを安く売る」商慣習で、34年間は商標だった

先に結論を置く。タコチューズデーは祝日でも記念日でもなく、飲食店の販促である。 火曜が選ばれた理由も色気がない。週の中で客足が鈍る曜日だからだ。

そのうえで、日本語の解説にほとんど書かれていない事実がある。この言葉(英語では2語)は、1989年から2023年まで米国の登録商標だった。 登録がある間、権利者はその語を使う推定的な独占権を持つ。取消審判の申立書は、そのために他の事業者が法的措置を受ける可能性があったと述べている(2026-09-09取得)。

米国特許商標庁(USPTO)の商標審判部は、2022年11月28日の審決でこの語を次のように評価している。

a very commonplace term that refers to having tacos and drinks on that particular day of the week
(その曜日にタコスと酒を楽しむことを指す、きわめてありふれた語)

出典は USPTO 商標審判部 審決(Serial No. 88817107)(2026-09-09取得・訳は筆者)。この審決自体は先例ではないと明記されている。

つまり、言葉としてはありふれているのに、登録簿の上では34年間だけ特定の権利者のものだった。 そのねじれが2023年に解消された。以下、記録で追う。


2. 起源|一次記録がたどれるのは1979年まで

商標の登録記録には「いつからその名前を使い始めたか」の申告が残る。ここが起源を追う手がかりになる。

タコチューズデーの登録記録で申告されている使用開始は、2件とも1979年である。

1979年2月6日は火曜日だった(筆者算出)。書類に残っている限りで最も古い「タコチューズデー」は、ちゃんと火曜に立っている。

ここで正直に線を引く。一次記録で確認できるのは「登録上の使用開始の申告」であって、この言葉が世界で最初に使われた日ではない。 1979年より前の用例があったかどうかは、商標記録からは分からない。新聞広告に遡る説明を見かけることがあるが、本記事では裏の取れる範囲を超えて書かない。

推測: 火曜が選ばれた理由を明記した一次資料は見つからなかった。飲食店にとって火曜の集客が弱いことへの対策だった、というのが一般的な説明である。


3. 商標の経緯|2023年、2件とも取り消された

ここが日本語で正確に書かれていない部分だ。2023年に起きたのは「裁判で負けた」ではなく「権利者が自分から手放した」である。 順に見る。

権利は米国を2つに割って持たれていた

登録番号1572589(レストラン業・第42類)は1989年3月23日に出願され、同年12月19日に登録された。権利者は Taco John’s Seasonings Limited Partnership だった。2020年9月24日に Spicy Seasonings, LLC へ譲渡されている。

この登録には2つの制限が付いていた。1つは「TACO」の部分について独占権を主張しない旨の記載。もう1つが地理的な制限で、登録の効力はニュージャージー州を除く全米に限られていた。同州では Gregory Hotel, Inc.(ソマーズポイント)が別に登録を持っていたためである。出典は USPTO TSDR(Serial No. 73788518)(2026-09-09取得)。

1つの言葉を、2社が地図を割って持っていた。 州境を1本またぐと権利者が変わる、という状態である。

2023年に起きたことの時系列

日付出来事記録番号
2022-11-28USPTO審判部が別件で「ありふれた語」と認定Serial No. 88817107
2023-05-16Taco Bell IP Holder, LLC が取消審判を2件同時に申立て92082333 / 92082327
2023-07-18ワイオミング側が登録を自発的に放棄92082333
2023-08-01審判部が取消を認容・登録1572589 取消92082333
2023-10-20ニュージャージー側が登録を自発的に放棄92082327
2023-10-25審判部が取消を認容・登録3621366 取消92082327

出典はUSPTOの審判記録2件である。1件目が Cancellation No. 92082333(2026-09-09取得)。2件目が Cancellation No. 92082327(2026-09-09取得)。

申立ての理由は2つで、いずれも米国商標法第14条(3)にもとづく「普通名称化」と「放棄」である。申立書には、この語が全米の飲食店で日常的に使われており、出所を示す機能を失っている旨が書かれている。

申立人は自社が委託した調査結果も記載している。「86%の消費者が、この語は特定の企業と結び付かない一般的な名称だと考えている」という内容だ(申立書パラグラフ11・2026-09-09取得)。これは申立人の主張であって、審判所が認定した事実ではない。

なお、この申立書は法律文書としてはかなり砕けた文体で書かれている。冒頭部には「People like tacos on Tuesdays. They just do.(人は火曜にタコスを食べたがる。ただそういうものだ)」という一文が置かれている(訳は筆者)。連邦の書式にこれを入れて提出したという事実のほうが、個人的には印象に残った。

「誰でも自由に使える」は半分だけ正しい

2023年以降、連邦の登録簿にはレストラン業でこの語を押さえる登録が残っていない。ここまでは正しい。

ただし商標は商品・サービスの区分ごとに登録される。 飲食(レストラン業)の2件が消えたことは、「TACO TUESDAY という文字列の登録がゼロになった」ことを意味しない。

実際、2026-09-09時点でUSPTOの記録を確認すると、TACO TUESDAY は花火(第13類)の商標として2024年11月12日に登録され、今も有効だった。登録番号は7562755、出願人は American Promotional Events, Inc. である。出典は USPTO TSDR(Serial No. 98179829)(2026-09-09取得)。

火曜のタコスと花火は無関係に見えるが、商標の世界では別々の棚に並ぶだけだ。「解放された」と要約する記事は多いが、正確には「レストラン業の区分で解放された」である。


4. サンディエゴでの位置づけ|国境まで直線22kmの街の日常

タコチューズデーは全米の慣習だが、サンディエゴでの意味合いは他都市と少し違う。この街のタコスは、輸入された流行ではなく地元料理だからである。

サンディエゴ観光局(San Diego Tourism Authority)は公式サイトで、タコスを次のように説明している。

Tacos are the ultimate expression of San Diego’s cross-border cuisine — born of our proximity to Mexico, along with an abundance of fresh fish, local produce, wood-smoked meats and zesty salsas and sauces.
(タコスはサンディエゴの越境料理の究極形である。メキシコとの近さに、新鮮な魚介・地元の農産物・薪で燻した肉・風味の強いサルサが加わって生まれた)

出典は San Diego Tourism Authority|Seven Killer Taco Joints(2026-09-09取得・訳は筆者)。

距離の話も添えておく。ペトコ・パーク(Petco Park)から南のサンイシドロ国境検問所までは、直線で約22kmしかない(筆者算出)。この検問所について米国連邦調達庁(GSA)は「西半球で最も往来の多い陸路国境で、1日あたり2万台超の車両と7万人超の歩行者を処理する」と記している。出典は U.S. General Services Administration(2019-12-17)(2026-09-09取得)。

筆者の見解を書く。サンディエゴのタコチューズデーは、外から来た流行の輸入ではなく、もともとある食文化に曜日の名前が付いたものと捉えるほうが実態に近い。

観戦旅行の動線と重ねるなら、サンディエゴ観光モデルコースで組んだ1日の時刻表がそのまま使える。火曜は昼の予定が丸ごと空く曜日だからだ。理由は次章の数字で示す。


5. 独自データ:2026年のパドレス火曜ホームは12試合、全部18時40分開始

ここからは他に書いている人がいない数字を置く。旅程を火曜に合わせるかどうかは、この12行で決まる。

2026年のサンディエゴ・パドレス主催試合(レギュラーシーズン)81試合を曜日別に数えると、火曜開催は12試合だった。全体の14.8%にあたる。

開催日対戦相手開始時刻(現地)
2026-03-31サンフランシスコ・ジャイアンツ18:40
2026-04-14シアトル・マリナーズ18:40
2026-04-28シカゴ・カブス18:40
2026-05-19ロサンゼルス・ドジャース18:40
2026-05-26フィラデルフィア・フィリーズ18:40
2026-06-09シンシナティ・レッズ18:40
2026-06-23アトランタ・ブレーブス18:40
2026-07-07アリゾナ・ダイヤモンドバックス18:40
2026-07-28コロラド・ロッキーズ18:40
2026-08-11ミルウォーキー・ブルワーズ18:40
2026-08-25ピッツバーグ・パイレーツ18:40
2026-09-08ワシントン・ナショナルズ18:40

筆者集計。データの取得元は MLB Stats API(スケジュール・teamId=135)(2026-09-09取得)。開始時刻は現地時間(America/Los_Angeles)に換算した。

火曜は昼が完全に空く|12試合すべてがナイター

数えて驚いたのはここだった。12試合すべてが18時40分開始で、デーゲームが1試合もない。

同じ81試合を開始時刻で分けると、18時40分開始は35試合(43.2%)にとどまる。13時10分開始も20試合(24.7%)ある。つまり昼の試合は全体では珍しくない。それでも火曜に限れば、17時前に始まる試合は2026年に1つも無かった。

曜日別に並べるとこうなる。

曜日主催試合数うち17時前開始昼開催の比率
10220%
1200%
12867%
6117%
1400%
14321%
131292%

筆者集計(2026-09-09取得のMLB Stats APIより算出)。昼が完全に空くのは火曜と金曜の2曜日だけで、逆に日曜は12/13が昼開催だった。 日曜を観戦日に選ぶと、その日の日中は球場に消える。

意味するところは単純だ。ペトコ・パークは、全ゲートが第1球の90分前に開くとパドレス公式が明記している。出典は Petco Park A-Z Guide(2026-09-09取得)。18時40分開始なら開門は17時10分。火曜に観戦する日は、朝から夕方までが丸ごと自由時間になる。

昼寝に使うか観光に使うかは好みの問題だが、17時台に球場へ戻る予定だけは動かさないほうがいい。1日の割り方はサンディエゴ観光モデルコースに時刻表で置いてある。球場でどう過ごすかはペトコパーク観戦完全ガイドにまとめた。

なお、球場に食べ物を持ち込めるかは別の規定の話になる。パドレスは個人が食べる分の食品持ち込みを認めているが、容器サイズの条件が細かい。詳細はペトコパーク持ち込みルールに分解した。旅費の枠から先に決めたい場合はMLB観戦の総費用を先に見てほしい。

日程と開始時刻は変更されることがある。渡航前に必ず公式日程で再確認してほしい。


6. この記事に「どの店のタコスが美味いか」を書いていない理由

筆者の立場:筆者はペトコ・パークで観戦した経験がある。しかし、サンディエゴで火曜にタコスを食べ歩いた取材記録は残していない。したがって本記事には、店名の推薦も味の評価も一切書いていない。

理由は2つある。1つは、食べていないものを「美味かった」と書けば、それは体験ではなく創作になること。もう1つは、飲食店の割引条件が最も変わりやすい情報だからだ。「毎週火曜は1本1ドル」と書いた翌月に値上がりしていれば、その記事は読者を騙したことになる。

そこで本記事は、変わらないものだけで組んだ。確定した過去の日付、USPTOの登録番号、公式が公表しているスケジュールの3つである。 味の話は、実際に行って記録を取ってから別の記事で書く。


7. よくある質問

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出典・参考リンク

すべて 2026-09-09 に取得。

タコチューズデーとは何ですか?

飲食店が火曜日にタコスを割引価格などで提供する、米国の商慣習です。祝日でも公的な記念日でもありません。米国特許商標庁の審判部も、2022年11月28日の審決でこの語を「ありふれた語」と評価しました。原文は「その曜日にタコスと酒を楽しむことを指す、きわめてありふれた語」です(Serial No. 88817107・2026-09-09取得)。日本の「〇曜市」に近い販促の枠組みだと考えると分かりやすいです。

タコチューズデーはいつから始まったのですか?

一次記録でたどれるのは1979年までです。商標の登録記録に残る使用開始の申告が、2件とも1979年になっています。ニュージャージー州の登録では1979年2月6日と日付まで申告されており、この日は火曜日でした。ただしこれは「登録上の申告」であって、この言葉が世界で最初に使われた日を示すものではありません。それ以前の用例の有無は、商標記録からは確認できません。

タコチューズデーは商標だったと聞きましたが、今も商標ですか?

レストラン業の区分では、もう商標ではありません。2023年8月1日に登録番号1572589が、2023年10月25日に登録番号3621366が、それぞれ取り消されています。どちらも権利者が自発的に登録を放棄した結果です。ただし区分が違えば話は別で、TACO TUESDAY は花火の商標として2024年11月12日に登録され、2026年9月時点でも有効です(登録番号7562755)。

サンディエゴでパドレス戦を観る日にタコチューズデーは重なりますか?

2026年のパドレス主催試合で火曜開催は12試合あります。3月31日から9月8日まで、ほぼ隔週の間隔で並んでいます。12試合すべて18時40分開始で、昼開催は1試合もありません(筆者集計・MLB Stats APIより2026-09-09取得)。全ゲートは第1球の90分前に開くため、火曜観戦の日は朝から17時前までが自由時間になります。

ペトコ・パークにタコスを持ち込めますか?

パドレス公式は、個人が食べる分の食品の持ち込みを認めています。ただし容器はバッグ規定に従う必要があり、球場に持ち込めるのは1気室の透明バッグ(30.5×15.2×30.5cm以内)か12.7×17.8cm以内のポーチだけです。硬い容器や大きな箱はゲートで止まります。球場内のレストランやスイートへの外部飲食物の持ち込みは認められていません。詳細はペトコパーク持ち込みルールにまとめています。

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